【ノンフィクション】400万払って中国人と結婚した職場のおっちゃんの話







昔話になるのですが、食品加工工場で働いていた時の話です。

働いて一年ほどになろうかというとき、会社の門の前で何やら揉めています。

仕事中というのに段々と人が集まってきました。

好奇心に駆られた僕は、「どうかしたんですか?」と野次馬に。

しかしそこには中国語で泣きながら土下座をしている女性の姿がありました。

『えっくん』と呼ばれる男性社員

僕が働いていた工場では大手スーパーに品出しする総菜やダシ、刺身のツマを取り扱っていました。

そこで働く『江川正志(えがわまさし)』(仮名)40歳、通称『えっくん』と呼ばれる男性上司。

えっくん うぴぶろ

勤続20年になろうかというベテランですが、お世辞にも仕事が出来ず、もごもごとしゃべり、しょっちゅう怒られていることから職場の人たちから少々バカにされ気味の人です。

真面目は真面目なのですが…

僕はその人直接仕事のやり取りをしていました。

 

えっくん中国へ

えっくん、ある日何の前触れもなく中国へ行くことを言い出しました。

なんでも黒竜江省へ行くとのことです。

唖然とする僕や職場の人たち。

目的を聞くと「お見合いに行く」ということのなのです。

 

中国でお見合い?

意味がよく理解できなかった僕は、とりあえず直接本人に確認します。

「お見合いってなんの話ですか?知り合いでもいるんですか?」

その質問に対して、「お見合いなんだよね」という答えしか返ってこなかったので、えっくんの上司で、僕と仲の良かった杉野さん(仮名)34歳に確認しました。

「両親が金出したんだって」

「かね?」

「そう、400万

「400万!?」

「婚活パーティーらしい」

杉野さん

えっくん、400万払って中国へ

皆に10日間ほど会社を休むことを告げたえっくん。

もちろん有給です。

中国へ向かう2週間ほど前での報告です。

突然人員が減ることなどおかまいなしに、普通に中国へ行きました。

 

中国から戻ってきたえっくん

普通に返ってきて普通に職場で働くえっくん。

正直僕たちとしては気分のいいものじゃありません。

とりあえず僕は確認します。

「どうでした?」

「…(ニッコリ)」

微笑しながらうなずくえっくん、僕は嫌な予感を感じます。

 

再度中国へ向かうえっくん

それから1ヶ月が過ぎたころ、ふたたび中国へ向かうことになりました。

やはり10日ほど休みが必要で、またも職場を開けることとなります。

杉野さんは半ギレです。

 

えっくんの身の上話

今回の中国行はえっくんの両親によるもので、えっくんの弟は交通事故で逝去しており、もはやえっくん以外子供はいません。

40歳を超え、独り身のえっくんの身を案じてのこと…

なんとしても所帯をもってほしい、両親の切実な願いです。

 

えっくん、またしても…

えっくん三度目の訪中へ…

結婚式をあげるそうです。

「よかったですね、えっくん」

素直に僕はそう思いました。

 

えっくんvs杉野さん

この状況に面白くないのは杉野さん。

何の断りもなく3度も訪中し、その間杉野さんが穴埋めしています。

帰国してからも礼の一言もなく、しゃあしゃあとしているえっくんに怒りが収まりません。

 

仲の悪い両名

杉野さんはえっくんより5つほど若く、バイトから正社員、主任へなった人で、まじめで要領よく動きます。

まごまごと動きの悪いえっくんの事があまり好きではなく、また、えっくんも自分より年下で経歴の浅い杉野さんに顎で使われ気分のいいものではありません。

 

激突!!

それは三度目の訪中前だったでしょうか…

えっくん、遅刻してきました。

普通に寝坊です。

朝一の出荷前で忙しい中の遅刻、しかも連絡もありませんでした。

穴埋めに杉野さんが入るのですが、もはや何も言いません。

仕事開始から30~40分ほどが過ぎたころ、えっくんが頭を下げて職場へ来ました。

目を合わせない杉野さん。

杉野さんの顔がみるみる青ざめていきます。

杉野さんとえっくんが接近した時、杉野さんが爆発。

 

あわや喧嘩に

大声でえっくんをどなりつけ、胸(体当たり的な)でえっくんを突き飛ばす杉野さん。

えっくん涙目でやり返そうとしますが、ヤンキー張りのガンつけでえっくん何もできません。

杉野vsえっくん

20日余りも職場を開けてながら上司の杉野さんに詫びの一言もなく、遅刻までする。

職場の皆は杉野さんに同情的です。

その後冷蔵庫の中で小1時間何やら話こんでいましたが、会話の内容はわかりません。

杉野さんは自分の職場に戻り、もくもくと仕事をするえっくん。

その時の僕とえっくんの会話です。

「ドンガラガッシャーンと派手な音でも鳴るのかと思いましたよ。ただ殴られても警察は自分で呼んでくださいね。僕は知りませんよ」

「大丈夫だよ」

「…(分かってんのかこいつ)」

 

職場に来た奥さん

なにはともあれ無事中国人女性と結婚したえっくん。

何やら若返ったようにも見えます。

結婚から1月あまりがたった頃でしょうか。

えっくんの奥さんが職場に来たのです。

 

職場に来た奥さん

黒竜江省は田舎の方だと聞いてはいましたが、外観は普通の女性。

細身のジーンズにちょっとした重ね着と、特に違和感を感じません。

遠目ながらも、えっくんの奥さんを見て職場もざわつきます。

しかし、何やら様子が変です。

もう一人、別の女性がいます。

 

泣いて土下座する奥さん

総務から呼び出しを受けたえっくん。

何やら尋常じゃない状況で、会社門の前に人が集まっています。

好奇心から僕も駆け寄ります。

 

「別れてください」と懇願する中国人の奥さん

彼女、土下座しながら中国語で泣きわめいています。

もう一人いた女性が彼女を庇うようにカタコトの日本で喋っています。

後でわかったのですが、庇っている女性は奥さんの妹です。

何を言っているのかわからなかったのですが、なんと彼女、中国語で「別れてください!」と懇願していたのです。

 

実は彼女、子持ちだった

彼女は40歳ほどで実は子供が4人います。

 

返ってこない400万…

えっくんと彼女は離婚し彼女は中国へ帰りました。

当然400万円は返ってきません。

 

当時から言われてた詐欺疑惑

えっくんが中国へ行っている間、職場では「騙されているのでは?」という話はありました。

水を差すわけにもいかず、皆黙っていたのです。

会ったこともない日本人と中国人が結婚するためには、お見合いブローカーのような仲介が必要のはず。

この見合い話は彼女にとってメリットがなく、仲介役からのいくらかの金銭のやりとりがあったと考えるのが妥当でしょう。

早い話とりあえず結婚し、嫌なら彼女は国へ逃げればいいだけで、結果逃げました。

 

えっくんに変化が…

土下座騒動の日えっくんは帰宅させられたのですが、翌日は普通に来ました。

最初のうちは特に変化がなかったのですが、1ヶ月が過ぎたころだんだんと厳めしくなっていきます。

言葉数が減り、人の話を聞かなくなりました。

作業も自分勝手となり、ついには河野課長(この時杉野は別の部署へ異動となりました)とも激突。

包丁を持った状態で詰め寄ってくるえっくんに河野課長もビックリ。

話し合いの末、えっくんはバット(商品を入れるプラスチック製の箱)洗いに降格させられることとなりました。

 

不憫なご両親…

そんなこんなもあって、えっくんはバットを機会に入れて詰むだけという閑職に追いやられたのですが、不憫なのはえっくんのご両親。

400万円を泣き寝入りする羽目になったことには、胸が痛みます。

しかし中国人なら金さえ払えば結婚できるだろう、という安直な考えが裏目に出ただけかもしれません。

400万円は大金ですが、人の心を買える金額ではなかったのでしょう。

なんにせよ考えさせられる経験でした。







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